手彫り印鑑は印面に逆さ文字を手書きするところから始まります。
(正確には印面調整や字割りなど下仕事はあります)
オレンジ色の部分は朱墨で、それに道具で「字割り」という割り振りを線を引きます。
それに黒墨で逆さ文字を書いていくのですが、通常は一筆書きではなく何度か修正
をして、形の整った文字に仕上げます。
修正はするものの、逆さ文字を手書きする作業は熟練の職人でなければ出来ません。
これが手彫り印鑑と機械で彫られた印鑑との違いです。
(紙に文字を書いたものを転写する場合もあります)
使用している筆は小筆です。
筆先の大きさや彫刻台の木目と文字の太さを比べてみて下さい。
細密な文字でも全て手書きしてから始めるのが手彫り印鑑です。
手彫り印鑑で重要な事は、もちろん手彫りですが、それと同じ位文字も重要です。
美しい文字が無ければ美しい手彫り印鑑を彫る事ができないからです。
いよいよ粗彫り開始です。
職人によって作業手順に多少の違いはありますが、まずは枠どりから彫り始めるのが基本です。
ハンコを彫る彫刻刀は「印刀」(いんとう)という印章彫刻専用の彫刻刀です。
職人は印刀を自分で研いで作ります。
印刀の素材は印材問屋で販売していますが、研ぐ前のもので、そのままで使用できるものでは
ありません。
巻き籐を使い柄に印刀の素材を取り付け、そこから砥石でとぎ、印刀を完成させます。
今まで平面だった印面が手彫りする事によって凹凸が生まれてくる過程をご覧下さい。
手彫りするならば、やはり天然素材に限ります。
手彫りの触感の良さは、彫っている職人にしかわかりませんが、いい印鑑にはいい素材が
必要です。
彫りにくい印材でいい印鑑は彫れないものです。
彫る個所に合わせて、彫る方向も変えます。
彫刻台を彫りやすい方向に角度を変えて彫ります。(ここでの彫刻台は篆刻台を使用しています)
写真は拡大してありますが、実物は1センチほどの小判型印鑑ですので、細密な作業になります。
彫ってある個所と、まだ彫っていない個所の違いがよくわかる場面ですが、こういう工程は
手彫り印鑑の醍醐味の一つです。
ご覧いただければお分かりかと思いますが、これは太枠細字の篆書体小判型印鑑です。
「古き良き時代」の印鑑です。
粗彫りが半分以上終わったところです。
ハンコは印影を使うものですので、彫刻工程はあくまでも過程です。
字入れのところでも書きましたが、この作業を手仕事でこなすには、熟練の技術が必要です。
「手彫り」と「機械彫り」の違いは、単に作業を手仕事でこなすか機械でこなすかではなく、
「熟練職人にしかできない技術が手彫り印鑑にはある」という違いが大きいのです。
また、生きた文字かどうか。
具体的には例として「著名な書家の書の掛軸」を挙げます。
著名な書家の書の掛軸が2つあるとします。
一つは、真筆・肉筆の掛軸
もう一つは同じ筆跡の印刷された掛軸
どちらも整合性の観点で見ると全く同じですが、価値という観点でみるとどちらが価値のある
掛軸かは、説明するまでもないと思います。
それが手彫り印鑑です。
ほぼ粗彫りが終わったところです。
次に印面調整(滑らかにする工程)と朱墨を塗り直して最終工程の仕上げです。
太枠・細字(中輪細篆書体)の小判型印鑑です。
手彫り印鑑をご検討のお客様へ
当店では手彫り印鑑をご注文いただきました全てのお客様へ、彫刻途中の写真を差し上げております。
ホームページ上で紹介している写真は、写りが良いものを選び、お客様のご承諾をいただき
掲載しているものです。
写真は素人撮影ですので、写り具合の悪い場合やデータの損失、またはうっかり撮り忘れも有り得ます。
これらの理由により写真を差し上げられない場合でも、間違い無く手彫りを行っております。
その為、写りの悪い場合や、写真そのものが差し上げられない場合でも、返金等は出来ません事を
ご理解下さいませ。
(写真の写りの悪さ、及び差し上げられない場合差し上げられない事は免責とさせていただいております) 尚、当店の彫刻方法は「手彫り」と「手仕上げ」の彫刻方法でお承りさせていただいておりますが
写真サービスは手彫り印鑑のみとなります。