当店は野生動物の種の保存に関する法律に基づく特定国際種事業届出事業所です。
古くからの伝統的な印章(印鑑)、当店の方針、古い印章資料(主に印影)や商品等を中心にご案内致します
店主のブログ
古き良き時代の手彫り印鑑を紹介するコーナーですが、今回はKF印鑑ケースの説明です。
商品の宣伝を兼ねておりますが、決して趣旨違いではありません。
手作り印鑑ケースと言えば昔からKF印鑑ケース
老舗印章店にとってはKF印章サックと言った方が馴染みがあると思います。
この写真は標準品です。
「手作り印鑑ケース」と言っても見掛けはごく普通のケースです。
でも他のケースを見慣れている方は何か気付きませんか?
こちらは部分的に拡大した画像です。
朱肉を入れる部分は肉池(にくち)と言いますが、蓋がありません。
印章店の私にとっては何の疑問もない当たり前の事でしたが、お客様からのご質問で説明不足に気付きましたので
この場を借りて説明させていただきます。
KF印鑑ケースの販売ページにではなく、このブログで説明するのも理由があります。
それは後の画像で説明しますが、なぜ肉池に蓋が無いのでしょうか。
蓋付きのケースを見慣れたお客様からみれば何か物足りない気がしてしまうのはごく自然な事だと思います。
ですから私がいくら「KFケースは手作りのいいケースです」と紹介しても疑問を感じてしまうと思います。
はっきり言って「安っぽい」という印象をもってしまった方も居らっしゃるのではないでしょうか。
なぜ昔からあるKF印鑑ケースの肉池には蓋がないのでしょうか。
それは下の写真を見ていただければわかると思いますが、本来蓋は(標準品は)なかったものなのです。
下の写真をご覧下さい。
大正時代の印判用品問屋さんのカタログです。 (注 写真のケースの製造元は不明です)
見づらいかも知れませんが全てのケースで肉池の蓋がありません。
部分的に拡大した写真です
拡大写真2
飾り絵(象嵌)のほどこされた高級印材を入れる鳳凰模様の高級ケースも肉池に蓋はありません。
私は情緒あふれる印材につい目がいってしまいますが、今回はあくまでもケースについての説明です。
どうでしょうか。
昔のケース(標準品)は蓋など無かったのです。
なぜ蓋がないかというのは、蓋など必要ないからです。
朱肉が乾いてしまうかもと心配なお客様も居らっしゃるでしょうが、油性マジックのように蓋を閉めないと
乾いてしまう心配はありません。
そもそもケースそのものが蓋の役割をしておりますので、更に蓋を取り付ける必要はないのです。
朱肉には油分が含まれているので、蓋がなければケース内が乾燥してしまう心配も少なく、乾燥が原因で印材に
ヒビが入ってしまう事の予防にも一役買っていました。
もちろん、蓋付きのケースはありました。
それは牙蓋(げぶた)という象牙製の飾り蓋です。
現在、一般(KF以外)のケースで肉池にプラスチックの蓋が付いているのは象牙の飾り蓋をプラスチックで
再現しているものなのです。
今、ほとんどのお店では印鑑ケースには練り朱肉ではなく布パッド朱肉を入れているようですので飾り蓋が
あっても無くても関係ないのかも知れません。
しかし、KF印鑑ケースは本来の練り朱肉を入れやすいようにとプラスチックの飾り蓋などは付けていないのです。
(蓋はあくまでも飾り蓋ですので、蓋があっても練り朱肉が入れてあれば乾燥を防ぐ役割は変わりません)
印鑑ケースは車の新車と違って地味な品物ですので、手にしてすぐにいいと感じる事は少ないかもしれません。
でも、昔から高級印鑑ケースと言えばKF印鑑ケース
老舗印章店の常識です。
(以前はKF印章サックという名前でした)
印章店を経営する私にとって宝である古いカタログを紹介したかったのでこの説明はブログに書かせていただきました。
つい牙次印や象嵌の事を語ってしまいたくなりますが、それはまたの機会に
◎本文中と重複しますが、このページの大正時代のカタログ写真(白黒)のケース製造元は不明です。
カタログ写真は昔の印鑑ケースは肉池に蓋が無いのが標準だった事の説明の為に掲載しました。
当ぺージの白黒写真のケースがKF製の印鑑ケースであるかどうかについては不明です。
◎練り朱肉の油分により印材の乾燥を防ぐ事はあくまでも練り朱肉の副産物的効果です。
練り朱肉を入れる本来の目的は捺印に使う為です。
朱肉によって乾燥を完全に防げる訳ではありませんので誤解の無いようお願い致します。